あなたは、家計簿をつけていますか? あるFPの家計簿をつけない理由とは。

家計簿の役割を理解していない人々

 「やっぱり家計簿って、つけていますよね?」

 これまで何度聞かれたことでしょうか。期待を裏切るようで申し訳ないのですが、私は家計簿をつけていません。私のみならず、周りのFP(ファイナンシャル・プランナー)仲間でもきちんと家計簿をつけている人を見たことがありません。他のFPはともかく、私が家計簿をつけない理由は単純そのもの。家計簿をつける「必要性」を感じていないからです。

 どうも「家計簿」には、きちんと家計管理できる人の“必須アイテム”といった印象があるようです。本当にそうでしょうか?

 いろんな方の家計診断をしていると、意外と家計簿の意味合い(必要性)を理解している人が少ないことに気が付きます。この点を理解せずに家計簿をつけても、何ら家計が改善しないことが起こりえます。

 家計簿の「つけ方」ばかりを気にする人もいますが、「家計簿の役割」をしっかり理解できれば、細かいやり方やルールは人それぞれでよく、つけやすい方法で問題ありません。

例えば、「肉じゃが」と一口にいっても、家庭それぞれの味があるのと同じです。家計簿にも個性があっていいと思います。ただし、役割の理解があいまいになると、どうつけたらいいのか、とノウハウに走り、結局本来の目的を達成できなくなってしまいます。

 もちろんつけ方にコツがないわけではないのですが、より大事なのはソコではない、ということです。

 家計簿は、家計改善のためにつけるものと思っている方は多いのではないでしょうか。

 確かに間違いではないでしょう。白状すると、少し前までは私もそう考えていました。

 しかし、よくよく考えると、家計改善のためと分かっていて、どれだけの人が本当に改善できているでしょうか。不思議なことに意外とできていないのです。

 「何を」買ったかではなく「なぜ」買ったか

 私なりの結論ですが、家計改善は「結果」です。本来の目的を達成できたときの「結果」であって、本来の目的はもっとストレートなものです。

 では、「家計簿の役割」、つまりその「必要性」とは何でしょうか?

ズバリ「正しいお金の使い方」になっているかどうかのチェックです。家計簿は正しいお金の使い方を身に付けるためのツールなのです。

 お金の使い方で人生は変わります。

 家計簿をつけていても何も変わらないのは、お金の使い方に何の変化もないからです。同じことをただ繰り返して、それを記録しているだけにすぎないからです。

 では、「正しいお金の使い方」とは、どのような使い方をいうのでしょうか。

 一言でいえば、「生き金」かどうかです。

 お金は使ったら、無くなります。でも、お金で交換したモノやサービスは残ります。手に入れたモノやサービスが、自分の人生にきちんと役に立つことで、失ったお金は生かされたといえます。

 購入したものがあってもなくてもよかった、あるいは、必要なかった、となればそれはムダづかい、「死に金」です。お金をドブに捨てたようなものでしょう。それではお金が浮かばれません。

 ということは、家計簿に「何を」「いくら」で買ったかだけを記入しても、効果は半減ということがお分かりいただけるでしょうか。集計しても、「あぁ、これだけ使ったんだな」で終わり。これでは家計は何も変わりません。

大切なのは、「何を」買ったかではなく、「なぜ」買ったのかです(動機)。そして、それらがきちんと自分の人生に生かされているかどうかまで把握するのが理想です。

 それは「費目」だけを眺めていてもつかめません。例えば、同じ「外食」であっても、仕事で遅くなって料理する時間もなく外食をした場合と、何となく外食した場合とでは、意味合いが違います。外食に限らず、何でも簡単に手に入る現代社会では「何となく」の支出に「死に金」が潜みやすいものです。

 本来の目的を達成するためには、「費目」と「金額」の羅列だけの家計簿は卒業しましょう。加えて、購入動機を書き込んでください。日記感覚でOKです。

 レシートに○と×だけつける

 とはいえ、すべてに購入動機を書くのは大変なので、私はレシートに○×をつけることで、チェックすることをお勧めしています。生き金だった買い物のレシートには「○」、死に金のレシートには「×」をつけるわけです。さらに可能なら購入動機も少し書く。

「×」の傾向を見ることで、あなたのお金の使い方の悪い癖が見えてくるはずです。「×」を反省しつつ、「○」の使い方にフォーカスし、その繰り返しで「正しいお金の使い方」を身に付けていきます。数か月経ってから、過去の○×をつけたレシートを振り返るのも非常に効果的です。

 さて、ここまでくれば、私が家計簿をつけない理由はもうお分かりですね。私は「正しいお金の使い方」に自信があるので、必要性を感じないのです。ただし、完璧とも思っていませんので、もっと簡単な方法で家計管理しています。それは、「家計簿」ではなく、「貯蓄簿」です。「貯蓄簿」とは、私が勝手に言っている名称です。

 収入は、「使う」か「貯める」かの2つしかありません。コインの裏表のような関係です。使う方の管理が家計簿であれば、貯める方の管理が貯蓄簿です。

 貯蓄簿では、月に1回貯蓄残高をつけていくだけ。前月との差を見ることで、貯蓄達成額が分かり、収入と差し引けば、使った総額は把握できます。月に1回、30分もあればできるので、非常に楽です(詳しいやり方は『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(八ツ井慶子著・プレジデント社)参照)

 貯金ができなければ家計簿をつける意味はありません。でも、家計簿の正しいお金の使い方が身に付けば、卒業して構わないのです。(ファイナンシャル・プランナー 八ツ井慶子=文)(PRESIDENT Online)

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